Sticky Music /Voce é Bossanova

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ドクター・ジョンの追悼もままならぬまま、デイヴ・バーソロミューが亡くなって、アンドレ・マトスが亡くなったと思ったら、「ボサノヴァの神」、「ボサノヴァの法王」ジョアン・ジルベルトが亡くなった。

僕は1966年生まれなんだけど、中学校の同級生のMが小学校の時に習っていたエレクトーンにはボサノヴァっていうリズム・パターンがあったと思うし(ボサノバだったかも知れないけど)、僕とMと三人でバンドごっこをやったFの家にあった、多分Fのおかんが習い始めた新しい型のエレクトーンにはボサノヴァレゲエの伴奏パターン(左手でコードを押さえるとリズムに合わせて伴奏が付く最新マシーンだった)も入っていたと思う。

ジョアン・ジルベルトとボサノヴァ、ボブ・マーリーとレゲエっていうのは同じような印象で、決定的な創始者のひとりではあると思うけど決して一人でやったわけじゃなく、世界中の数多くのミュージシャンが取り入れて発展させてジャンルを作っていったってことかな?
いずれにしても、1966年生まれの僕がロックを聴くようになったころには、少しづつ変化はして行きながらも、すでに確立したジャンルだった。

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ボサノヴァ:Bossa Novaは、 Novaはポルトガル語で「新しい」、Bossa は「隆起、こぶ」っていう意味で、Bossa Nova は「新しい傾向」「新しい感覚」っていう意味らしいから、『ニュー・ウェイブ』っていう感じかな?
レゲエと同じように古くからの民族音楽っていう印象もあったのだけど。

ジョアン・ジルベルトの元妻、アストラッド・ジルベルトが歌った大ヒットした「イパネマの娘」の印象なのか、ボサノヴァといえば女性ボーカル。
あ、男性の名前がタイトルになった女性ボーカル曲があった。
”Dinji”(邦題:ジンジ)(1965)というのは女性の名前らしいけど、女性ボーカルだと、男性の名前って感じじゃない?
日本の演歌の逆で、男性が女性のことを歌にしたのを女性が歌うっていうのがボサノヴァのスタイルかな?

有名な「イパネマの娘」だって、僕が知ったのは結構残酷な話だと思った「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」の入った村上春樹の短編集を大学生の時に読んで、その中にあった「1963/1982年のイパネマ娘」でなんだけど。

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時々、地下鉄の車両の中で彼女に出会うことがある。そのたびに彼女は<あの時はビールをどうもありがとう>式の微笑を僕に送ってくれる。
あれ以来我々はもうことばは交わさないけれど、それでも心はどこかでつながっているんだという気はする。
どこでつながっているのかは僕にはわからない。
きっとどこか遠い世界にある奇妙な場所にその結びめはあるのだろう。
そしてその結びめはまた別のどこかで高校の廊下やコンビネーション・サラダに、あるいは菜食主義者の「いちご白書」的女の子につながっているのだ。
そんな風に考えると、いろんなことが、いろんなものが少しずつ懐かしく思えてくる。
どこかにきっと僕と僕自身をつなぐ結びめだってあるはずなのだ。
きっといつか、僕は遠い世界にある奇妙な場所で僕自身に出会うだろう、という気がする。
そしてそれはできることなら暖かい場所であってほしいと思う。
もしそこに冷えたビールが何本かあるなら、もう言うことはない。
そこでは僕は僕自身であり、僕自身は僕である。
そのふたつのあいだにはどのような種類のすきまもない。
そういう奇妙な場所がきっとどこかにあるはずなのだ。

1963/1982年のイパネマ娘は今も熱い砂浜を歩きつづける。
レコードの最後の一枚が擦(す)り切れるまで、彼女は休むことなく歩きつづける。

(村上春樹「1963/1982年のイパネマ娘」。『カンガルー日和(びより)』文庫本:1986年初版より抜粋)

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定説では、ブラジルでのヒットのきっかけは1958年にアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ヴィニシウス・ジ・モラエス作詞、ジョアン・ジルベルト歌・ギターによる“Chega de Saudade”(シェーガ・ジ・サウダージ、邦題:想いあふれて)のシングルレコードによって(Wikipedia)。

僕はサウダージ(ポルトガル語で郷愁、憧憬、思慕、切なさ)という言葉の意味もよく知らなかったのだけど、知ったのは高橋健太郎さんの「アレサ・フランクリンのサウダージ」~”クイーン・オブ・ソウル”(『MUSIC MAGAZINE』2018年10月号)で。

MUSIC MAGAZINE 2019年4月号、『特集 50年の邦楽アルバム・ベスト100』の「今回の投票に際しての選評、ランキング結果を見た感想、シーンに対する思いなど」を転載。
敬称略で。
選んだアルバムも女性ボーカルのアルバム中心に。

高橋健太郎】(第6位:熱い胸さわぎ/サザンオールスターズ、第8位:それから/JAGATARA、第9位:月面軟着陸/ピチカート・ファイヴ、第11位:B-2 UNIT/坂本龍一、第12位:ひこうき雲/荒井由実、第13位:4 to 3/小川美潮、第14位:BELLS/吉田美奈子、第25位:ホームシック/ECD、第26位:Seven & Bi-Decade/吾妻光良&スウィンギン・パッパーズ、第28位:祝再生(VIVA LAVA LIVA)/サンディー&サンセッツ、第30位:つぎねぶ/ASA-CHANG&巡礼、第29位:たまご/くじら、第32位:UTAU/大貫妙子坂本龍一、第33位:Essencia/小野リサ、第34位:Thrill March/朝日美穂、第35位:Blind Botanical/さかな、第40位:Viva! La Woman/チボ・マット 、第41位:Sun and Rain/YOSSY LITTLE NOISE WEAVER、第43位:Dream My Bones/石橋英子、第45位:Junior Sweet/CHARA
初めて買った日本のレコードだった『風街ろまん』が集計で1位というのには目眩が。僕は日本の音楽のごく一部しか聴いていない自覚があるのだが、100位までに知らないアルバムはなかった。本誌の傾向がくっきりした結果だと思う。日本の音楽家は面識ある人達が多いので、個人の選盤はそこは気にせず。日本語の音楽を聴きたいが、聴ける「うた」は少ないというジレンマが見てとれるように思う。

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81枚目/96枚(126枚)は一度見送ったサンディー(&サンセッツ)。(全体では第90位に『MERCY』/Sandiiがランキングしてる)
ちょっといつの発売か分からない、ベストアルバム。
の、再発盤(?)を。

リクエストは、オーストラリアでヒットしたっていう、

STICKY MUSIC/『 Viva Lava Liva: 1980–1983』- Sandii& the Sunsetz

80年代に戻っちゃう感じだけど、もう1曲。

沢山の人がランキングして、全体では『SONGS』/シュガー・ベイブが第2位、第56位に『SUNSHOWER』、第179位に『Cliché』がランクインした大貫妙子の、小野リサが参加したアルバムから。

Voce é Bossanova/『PURISSIMA〔プリッシマ〕』(1988)-大貫妙子

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70年代に戻っちゃう感じだけど、もう1曲。

Day Dreaming/『Young, Gifted and Black』(1972)-Aretha Franklin

upset the apple-cart(2007- )へのリクエスト(3287,3288,3289)
コモン・ストック(1991-1999)へのリクエスト(3301,3302,3303)

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