Get Away/『Yuck』(2011)

画像ちょっとアートっぽいリクエストが続くのは本意ではないし、その日の気分によってはちとグロテスクな印象のあるジャケットのYuckよりも、今聞くと冗談のような「アートロック」、ピンク・フロイドの一枚目やヴァニラ・ファッジの一枚目の方を聴きたくなることもある。

学生時代は毎日首が太く短くなる運動をやっていたので黒のタートルネックは似合わなかったけど、胸に真っ赤なバラのついた白いラグビージャージをストレートのジーンズに裾(すそ)を入れて着たりもしていた。

僕だけじゃなくて、同い年や一つか二つ年上や年下の同性はみんなアンビバレント(両価感情的、両面価値的)だったし、アンビヴァレンスだかアンヴィバレンスだかの太宰(呼び捨てにした)や三島(やはり、呼び捨てにした)なんて大嫌いだった。

第一次世界大戦後のダダに代表されるようなものは、ジョン・メイナード・ケインズにだって十分すぎるくらいあった。

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『確率論』が書かれた動機のひとつに学生時代の哲学の師ムーアの『プリンキビア・エティカ』(一九〇三)を乗り越えるということがあった。
ムーアはラッセルとともに分析哲学を創始したとされる人物であり、ケインズはムーアを心底から敬愛していたが、ムーアの書にはどうしても納得の行かない箇所があった。
その箇所を修正し、ムーアが本来書くべきだった道徳哲学を完成させようとケインズは目論んだのである。

ケインズが物心ついた頃のイギリスでは、威厳や礼節が強調されるとともに社会には暗部も存在し、二種規範や偽善が蔓延していた。
二〇歳を迎える頃のケインズは偽善的な世俗論理を拒否するようになり、不道徳であっても真に論理的でありうることは可能と考えていた。
そして彼のそうした振る舞いを正当化させてくれるのがムーアの論理学であると思われた。

(松原隆一郎。「ケインズとハイエク 貨幣と市場への問い」。2011年。講談社新書)

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世俗の道徳は、「社会にとって有益である」とか「誰かにとって好ましい」という言い方で、特定の行動様式を強いている。
論理学においては、功利主義がそうした論法を支えていた。
これに対してムーアは『プリンキピア・エティカ』において、道徳にかかわる問いに先行する基礎命題である「善」は、社会にとっての利益になるとか誰かの効用を高めるといった事実に還元して定義することはできないと主張した(善の定義不可能性)。

「善いは善いとしかいえず定義できない」。

「社会にとっての有益さ」を目指す政治家の偽善的行為や「誰かにとっての好ましさ」を示す経済的成功は、ともに「善」すなわち人生の究極の目的ではないことになる。
ムーアのこの主張は、ヴィクトリア朝において紳士に課された義務に偽善を感じ取っていたケインズら青年たちの心をつかんだ。
ケインズが生涯、社会の幸福を最大にすべしというベンサム的な功利主義を「現代文明を蝕むウジ虫」として毛嫌いしたのも、効用の最大化を説くピグーの厚生経済学を一顧だにしなかったのもその表れだし、経済学の師マーシャルについても、「(彼にとって)経済問題の解決は快楽説的計算の効用ではなくて、人間のより高級な・・・能力を行使させるための先行条件であった」と評価している。

(松原隆一郎。「ケインズとハイエク 貨幣と市場への問い」。2011年。講談社新書)

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だがケインズには、ムーアには不徹底があるとも感じられた。

ムーアの宗教とは、善の直感にもとづく「時間を超越した、熱烈な、観照と交わり」であり、「美的体験の創造と享受であり、そして知識の追求」であった。
一方ムーアの道徳とは、未知の可能性を論拠に一般規則の遵守を説くものであった。
ムーアが宗教と道徳を併置しようとするのは、ケインズにとっては異様な主張に感じられた。

「われわれは、いわば、ムーアの宗教を受け入れたが、彼の道徳を捨てたのである」。

(松原隆一郎。「ケインズとハイエク 貨幣と市場への問い」。2011年。講談社新書)


リクエストはまだまだいっぱいあるupset the apple-cartで仕入れたアルバムから。

Get Away/『Yuck』(2011)-Yuck

Yuck are an indie rock band that originated in London, England.
The band features Max Bloom, who formerly played in the band Cajun Dance Party along with former 'Yuck' member Daniel Blumberg.
The band's self-titled debut album was released through Fat Possum on 21 February 2011 in the United Kingdom.
Critics have likened the band to bands such as Dinosaur Jr, Pavement, My Bloody Valentine and Sonic Youth.

これはいい。

いいものはいいとしか言えないわけだけど。

Request to 『upset the apple-cart』(1001)
Request to 『Common Stock』(1015)

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この記事へのコメント

M
2013年08月31日 14:22
インディー好きな人の間では有名だそうだけど、ベースのMariko Doiさんかっこいい!
Yuckの前にやってたLevelloadの"I Know You Know"のプロも見たけど見た目も音楽もYeah Yeah Yeahsにそっくりで笑っちゃいました。
2013年09月02日 01:28
>Mさん
僕は知らなかったのですが、容姿も似てますね!
"Yuck!"は「おえっ!」って意味なので、画像検索はしないほうがいいですよ。
手遅れだったらご容赦です。
コメントありがとうございます。

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